近年、台風や豪雨といった自然災害が相次いでいます。
保険証やキャッシュカードが手元になかったら、医療機関を受診できなかったり、お金が引き出せないのでしょうか?
いざという時のために、災害時の対処について学んでおきましょう。
災害救助法
大きな自然災害が発生したときには、災害救助法が適用されます。
災害救助法とは、災害発生時の応急救助に対応する法律で、被災者への救助を行うために制定されています。
例えば、
- 避難所の設置
- 炊き出しその他による食料品の給与
- 飲料水の供給
- 医療、助産
など12項目以上にわたる救助の種類が決められています。
被災した際には、この法律が私たちの生活に大きく影響します。
避難時、手元にお金がない時
避難が必要な際にお財布やキャッシュカード・通帳などを持ってくることができなかった場合、自分の銀行等からお金を引き出すことはできないのでしょうか?
災害が発生した際、災害救助法を元に、行政から金融機関に対して「金融上の措置」を講ずるように様々な要請が出されます。
その要請の中に、「本人確認書類があれば一定限度の金額までは預金の引き出しに応じるように」というものがあります。
ですから、多くの金融機関では、通帳やキャッシュカードがなくても一定金額は引き出すことができます。
ちなみに、ここで必要になる本人確認書類とは、運転免許証、健康保険証、国民年金手帳、住民基本台帳カード、旅券(パスポート)、外国人登録証明書、等です。
もちろん、緊急避難等で本人確認書類を持ってこれなかった場合でも、本人申告のみでの対応がなされる場合もあります。
他にも下記のような要請がなされます。
- 届出の印鑑がない場合には拇印にて対応
- 定期預金、定期積金等の期限前払戻し
- 預金等を担保とする貸付
証券会社や保険会社などへの要請
こうした要請は、銀行・信金・信組や郵便局に対してだけでなく、証券会社や保険会社にも同様になされます。
証券会社への要請
- 届出の印鑑を紛失した場合でも払戻しに応ずること
- 有価証券の再発行手続きについての協力をすること
- 預かり有価証券等の売却・解約代金の即日払いの申し出があった場合に、可能な限り払戻しに応ずること
保険会社への要請
- 保険証券、届出印鑑等を紛失した保険契約者等については、保険金等の請求案内を行うなど可能な限りの便宜措置を講ずること。
- 生命保険金、損害保険金の支払いについては、できる限り迅速に行うこと。
- 生命保険料又は損害保険料の払込については、契約者の被災の状況に応じて猶予期間の延長を行う等適宜の措置を講ずること。
どの内容であっても、被災状況に応じた本人確認が必要であったり、確認書類がない場合は後日書類の提出が必要となったり、本人確認手続き自体が省略されるわけではありませんので、その点は注意が必要です。
保険証がない場合でも医療機関を受診できる?
被災した際に、健康保険証が手元にない場合や現金がない場合もあります。そのような状況では医療機関を受診することができないのでしょうか?
保険証が手元にない時
健康保険証や公費負担手帳等を紛失あるいは自宅に残したまま避難されている方も、医療機関等で、各制度の対象者であることを申し出、氏名、生年月日、連絡先、住所等を申し立てることにより受診することができます。
現金がなく支払いができない時
7月の熊本豪雨災害では、窓口での支払いをすることなく医療機関が受診できるような措置が取られていました。熊本の例を見てみましょう。
令和2年7月豪雨災害被災者向けリーフレット(熊本県)より
次の➀~➄のいずれかに該当する方は、医療機関、介護サービス事業所等の窓口でその旨をご申告いただくことで、医療保険の窓口負担や介護保険の利用料について支払いが不要となります。(令和2年10月末まで)
① 住家の全半壊、全半焼、床上浸水又はこれに準ずる被災をされた方
※罹災証明書の提示は必要ありませんので、窓口で口頭で申告してください。
② 主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負われた方
③ 主たる生計維持者の行方が不明である方
④ 主たる生計維持者が業務を廃止、又は休止された方
⑤ 主たる生計維持者が失職し、現在収入がない方窓口での申告内容は、後日、保険者から確認が行われることがあります。
令和2年7月豪雨災害被災者向けリーフレット(熊本県)
*県外の医療機関等でも同じように受診できます。
*入院・入所時の食費・居住費などはお支払いいただく必要があります。
このように一定条件はありますが、お金の支払いをすることなく、医療機関を受診することもできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
災害時の緊急避難の際に、キャッシュカードや健康保険証がなくても、お金を引き出せたり医療機関を受診することは可能です。
しかしこれらは、災害救助法の適用となってからですので、自然災害が起きたら必ず可能ということではありません。
また、いずれの場合でも本人確認が必要となりますので、命を最優先にしながらも本人確認書類は持っていけるように、保管場所を忘れないようにしておきましょう。